金を通して世界を読む 【 金融・経済 】

金を通して世界を読む

 「金は世界情勢を映す鏡」 ~ 世界経済を知るためのゴールドの教科書

 本書は、投資・投機のための本ではありません。「金は世界情勢を映す鏡」という書き出しで始まるように、本書は世界経済の動向をゴールドという金融・宝飾商品を通じて解き明かしていきます。グリーンスパン前FRB議長が「公演料はゴールドで」と答えた真意は? 各国の中央銀行が金保有量を増やしているのは何故か? 金ETFが年金基金に買われ続ける背景は? 中国やインドで金の需要が旺盛な訳は? …… 本書を通じてそれらの理由を追いかけていくうちに、読者は世界経済のメインストリームの一端に辿り着いていることでしょう。ゴールドに何円と値段がついているのではなくて、日本円の価値がゴールドによって点数付けされているのだ、ということに気がついたときには本当に目から鱗が落ちました。それからというもの、筆者にはお札が只の紙切れにしか見えなくなってしまいました (^^;

 著者の豊島逸夫さんは、日本の金市場の立ち上げにも関わった金業界の第一人者と呼べる方です。著者のコラム「豊島逸夫の手帖」は、主に金市場から見たマクロ経済の動向(+ときどきスキー,旨い物,スイーツ+かつては愛猫)について解説しているブログで、数万人単位の読者を抱えているとのことです。その読者は、金融業界の関係者や、株式・FXなどを手掛ける個人投資家、地方で農業・漁業を生業にしている方々と全国に幅広く存在します。マクロ経済動向を把握するために、投資とは縁遠い方々もブログを読んでいるところが興味深いところです。

 ブログは半ば趣味(原稿料抜き)で書いておられるそうで、本書もその延長線上のような位置付けにあります。なので、本書の印税は慈善事業に寄付されるそうです。ブログが9年以上も続いているのは、趣味で書いているからなのでしょうね。著者によると、ブログを書くことによって頭の中の考えが整理されるから、ブログを書くのは自分のためでもあるとのこと。この一言が、私がブログを書き始めるきっかけになりました。

 本書の唯一といっていい難点は、読者に多少の予備知識(金融リテラシー)を要求していることでしょうか。日経新聞を日頃から読んでいる方にとっては、問題なく読み進めることができるでしょう。

 余談ですが、豊島さんは各地で甘いもの、旨いものを探しておられます。なので、サインのお願いをするときは地元の土産を片手にセミナーの楽屋を訪ねましょう。



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