【 金融市場の事件簿 】 (1) 3月17日6時 円高津波襲来

 (USDJPY 米ドル/円)

2011年3月17日 USDJPY チャート

 今もなお、福島原子力発電所では最悪の事態を回避すべく懸命の活動が続けられています。
東電の現場の作業員の方々、関連会社の方々、自衛隊員の方々、そして警視庁機動隊員の方々は文字通り命を削るような思いで奮闘されているのだと思います。
原発事故の収束と、そして現場の方々の無事を祈りたいと思います。

 話を本題に戻しましょう。
ついに円が対米ドルの史上最高値 79.75 円を突破。朝6時台に入ってそのままの勢いでロング・ポジションを次々と薙ぎ倒し、76.25 円の歴史的新記録を打ち立てるに至りました。まさに”円高津波”です。
 以下は、そのときの1分足チャートです。まさに”レートが飛ぶ”といった状況だったのではないでしょうか。朝起きて、ドル円のレートを見たらびっくりでした。
(ドル円ロングのポジション、火曜日に”津波てんでんこ”の如く放り投げて大正解だった……)

 史上最高値の要因については色々言われていますが、私は投機筋の売り vs. 買いのガチバトルの結果、最もマーケットが薄い時間帯を突いて売り方が買い方を寄り切って、買い方のストップ注文を連鎖反応的に発動させた結果、と理解しています。
 その証拠が、OANDA の Open Position 分布図です。左が6時、右が7時のポジション分布図ですが、含み損を抱えたロング・ポジションが振り落とされて激減しているのがよく分かります。これは、かなりの退場者が出ましたね……

2011年3月17日の Open Position

 念のために上図の読み方を書いておきますと、ロングは円売りドル買い、ショートはドル売り円買いの取引のことです。この図は、どの価格でロング/ショートのポジションの取引が行われたかの分布を表している訳です。橙色のところは利益が出ているポジション o(^∇^)o 、青色が損失が出ているポジション (;_;) です。
 円売りドル買いのポジションを買ったプレーヤーが、円高が進行しているにも関わらずドルを持ち続けた結果、ポジションの含み損の額が証券会社に預けた証拠金の余力を超えてしまったとします。その場合、証券会社は損失額が顧客の預け入れ金額を超過するのを防ぐために、顧客のポジションを強制的に清算します(ドル売り円買いですね)。いわゆる強制ロスカットというものです。その結果、ロングのポジションは消滅します。
 上図を見ると、6時の時点でのロングの青い部分(含み損)が、7時にはかなり減っていることがお分かり頂けると思います。この減った分は、プレーヤーが自ら損失覚悟でロングを処分したか、業者が顧客のポジションを強制的に処分したものです。おそらく、今回は後者の方が多かったのではないかと思います。まさか円が史上最高値を更新するとは、その前に日本政府が為替介入するはず、という思い込みが多くのプレーヤーにあったのでしょう、たぶん、史上最高値付近に強制ロスカットが発動される閾値が集中していたのだと思います。

 今回は、このロングポジションの強制処分が連鎖反応的に起きてしまったわけです。
まさに、セリング・クライマックスです。

 OANDA の Open Position は一業者のポジション分布に過ぎませんが、OANDA は北米大手の FX/CFD 業者で顧客数も多いですから、サンプルデータとして参考になるかと思います。
 ちなみに、XAUUSD(金/米ドル)のポジション分布もあります。これはかなり貴重。
ただし、このデータだけを当てにしてポジションを張ってはいけませんよ。

 ところで、こうして生まれたレートは当然ミスプライスな訳ですから、中長期投資家にとっては絶好のバーゲンセールになります。ファンダメンタルの裏付けがあれば、一も二もなく飛びつく一手となります。ただし、このバーゲンセールは FX の世界では年に1回あるかどうかで、しかもオープン期間が非常に短い超期間限定セールです。バーゲンハンターたちは、この一瞬を逃すまいと、日々相場をウォッチし、世界経済の動向の把握に努めているのです。  ちなみに、筆者の場合、ありえないレートの位置に置いていた豪ドルの指値注文が、寝ている間に刺さっていました。。。(注:低レバです!)かなり余裕を持って注文を置いていたのですが、朝起きてPC開けたらびっくりでした。

「筆者の見方は変わらず。今回の下げはまさに外貨の大バーゲンセールでした。ロングポジションが相当に掃けたので、ここから高値を最更新するのは至難であると考えます。ただ、最高値更新直後や原発問題が未解決ということもあり、今週いっぱいは荒い相場が続くと思いますのでご注意ください。原発問題は電源切断によって冷却システムが動いていないことが根本の原因のようですので、電源が復旧すれば解決の道筋が立ってくるのではないかと考えています。」

 というコメントを 3/18 の0時過ぎに書いたのですが、18 日の朝になって出ましたね、日銀砲が。76.25 の記録は当分破られることはないでしょう。筆者は、豪ドル買いポジションをこのままホールドし続ける予定です。半年以上後になると思いますが、おそらく相当の金額を被災地に寄付できると思います。問題は、どのような形で寄付を行うか。生きたお金の使い方を実践することは、如何にお金を稼ぐかよりも遥かに難しいのです。


(旧ブログの記事より,2011.3.18)  


 ミセスワタナベ狩り事件

 ドル円の為替市場は流動性が高く、比較的ボラティリティの少ない部類に入ります。その反面、円は欧米市場からは距離の遠い存在であることから避難先通貨としての役割を意識されることがしばしばあり、まれに信じられないような円高劇を見せることがあります。具体的なところでは、リーマンショック後の円高ラッシュ(2008年10月24日)であったり、この記事で書いた東日本大震災の円高津波であったりします。
 この円高津波が襲来したときの市場参加者の動揺はかなりのもので、その原因は何だったのか 当時さまざまな憶測が流れました。その後、「ミセスワタナベ狩り」が事件の真相だったのではないかという見方が有力視されるに至っています。筆者は事件の翌日に、「ドル円が史上最高値を更新する筈がない」と思い込んでいた投資家たちの強制ロスカットを狙った投機筋による犯行説を旧ブログに書いていたわけですが、あぁ やっぱりそうだったんだろうな と納得しております。

 この 76円25銭 というのは当時の史上最高値で、そのインパクトの大きさから筆者はこの値が最高値記録だと勘違いていたのですが (^^; よくよく調べ直してみると 2011年10月31日につけた 75円32銭 というのがドル円の最高値記録となっています。当日は、約8兆円規模という これまた史上最大級の為替介入が実施された日でもあります。

 3月17日の円高津波については、SBI リクイディティ・マーケットもレポートを書いています。外為ディーラーからの視点で書かれた内容であり、こちらも興味深いものがあります。



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